〜世界チャンピオンJack Carthyにあってきた話後編〜2022年3月23日ー25日
前回に引き続き、夫がやっているスポーツ、自転車トライアルの伝説的な世界チャンピオン、Jack Carthyと一緒に2日間だけトレーニングさせてもらいに行ってきた時の記録です。前編はこちらからどうぞ。今回の記事は後編です。
Jack Carthyの練習風景 |
それではどうぞ!
宇宙は幾つかのエンジェルを送った。
両親はもとより、地元のジム経営者、(彼はJackにプロのトップアスリートに見えるように自分のジムで彼の体作りを無償で行い、そしてスポーティブな格好良いトレーニングウェアを買ってくれるなど、スポーツ選手としてプロデュースしてくれた)
悪天候の時の練習場所を無償で提供してくれた地元のおじさんたち、
自分の競技を利用した仕事の取り方などを教えてくれたこれまた9回世界チャンプに輝いたケニー・ベライ(Jack曰く、お金を自転車だけで十分に稼いで生活している、という意味でのプロの自転車トライアルライダーはJackとケニーの二人だそう。私は一度で良いからケニーにも会ってみたい。惜しくも去年のW杯で引退してしまった。)
Jackは彼らへの感謝を忘れず、彼らのことを熱く話した。
きっと他にもいるのだろうが、今回Jackから語られたエピソードでは以上だった。
Jackに関しては様々な意見を知人から夫を通じて聞いていた。
驕っているだとか、教育を受けていないだとか、フレンドリーじゃない、だとか、、、あまり良い噂がなかった。
しかし、実際にあってみると、フレンドリーで自分の生活圏に入らせてくれるし、出し惜しみせず自分の気づいたことやテクニックをシェアしてくれるし、噂とは全く違って驚いた。
Jack Carthyの愛犬ロッキー |
夫と私が(特に夫が、、)、チャンピオンへ最大の敬意を示しているのが伝わっていたからかもしれないし、女性には優しいのかもしれないが、やはり、自分の目で見て耳で聞いて実際に体験してからではないと、本当のところはわからないのだ、ということをひしひしと感じた。
想像で人を評価するなんて以ての外だな、と自分を省みる機会ともなった。
ここで少し、彼を擁護するつもりではないのだが、幾つか私が感じた彼の特徴について記録するとともに、なぜ周りの人たちからいろいろ言われてしまうのかについて考察したい。
彼はまず、生粋のファイターである。これは、勝ちにこだわるトップアスリートにはとても大切な要素であると思う。
Jack Carthyの練習風景 |
だから、時としてエモーショナルに人々の目には写ってしまう。審判の判定云々の関係で1位を逃した一昨年にヘルメット投げた彼の行動はいささかSNSが炎上したように思う。
確かに、自転車トライアルの世界では珍しいのかもしれないが、フットボール選手や野球選手をご覧いただきたい。
頭突きした人もいるし、乱闘はトップアスリートにはつきものではなかろうか。
生きるか死ぬかの戦いから派生したスポーツ文化ではエモーションはつきもの。我々が想像する以上のアドレナリンのなかで試合しているのだからこれくらい当たり前。
Jack Carthyの練習風景 |
というか、これくらいでなくっちゃおもしろくない。これくらい本気でやってくれているから観戦する側もおもしろい。
それから、驕っていると捉えられてしまう言動について。
言葉だけ切り取ると、そう思われてしまいがちかもしれないが、彼の抑揚から、私は彼は彼なりに分析して事実をのべているだけであると感じた。
その事実がたまたまかなりの栄光であるから、自慢話しに聞こえてしまう場合があるのかもしれない。
しかし、彼はいたって話の流れで自分が分析して客観的な目でとらえた事実を述べているだけで、その証拠に、自分のことをJackと第三者のように語る場面に何回かでくわした。
でももし仮に、彼が実際に自分の成し遂げたことをアピールしていたとしても、まだ彼はチャンピオンといえども25歳の青年だし、9回もチャンピオンになっているのにまだ承認欲求がみたされていないということなら、それはそれで逆に謙虚ではなかろうか?
自分はこんなにすごいことを成し遂げたんだよ、頑張ったんだよ、とお話ししてくれているとしたら、逆に可愛らしいと感じてしまうのは私が女だからなろうか。
聞き手が男の子なら、彼にもプライドがあるだろうから、その嫉妬のような気持ちから歪んで捉えてしまうのかもしれない。
Jackは極めて素直で裏表がない。まっすぐだ。
疲れた時には疲れたように見えるし、余裕があるときはお茶を入れてくれたり、ご飯を一緒に食べようと誘ってくれるし、忖度せずに自分の意見を言う。
だから、アドレナリン全開で全集中勝負モードのコンペティション中に愛想を振りまくような余裕なんてないだろうし、そうするつもりもないのだろう。
(ふむふむ。これは、大変だ。彼を分析しているうちに、私の夫への理解が深まってしまった。これは近いうちにまたHowarthに行ってチャンピオンの奥さんにいろいろ質問したい。)
複雑にみえるようで、実はシンプルなのだろう。ただただ、その時の自分の状態に正直なだけなのだと思う。
言葉が率直すぎて裏を勘ぐりたくなることもあるかもしれないが、そのような場合、私たちの心理に問題があるといえよう(これは、夫と話してるときの私に対する慰めの言葉)
このような人こそ、本来は信用すべきなのだとも思う。
ファイター気質と書いたが、彼はなかなか懐が深く、情が深い。(それゆえのファイター気質なのかもしれないが。)
彼には4歳の息子さんもいて、お国柄なのかもしれないが、自分のやっているスポーツを息子に押し付けたりはしない。彼がやりたがったらサポートするかな、くらいだ。
そして自分の息子の好きな物、得意なものに関して、ちゃんと理解している。
奥さんが前の職場で不快な思いをしていたときも、それはダメだ、と辞めさせて、実家の一部を彼女のサロンに改装したのも、なかなかアツイ。
彼女の好きなことを尊重している感じも受けた。
そして、少し離れた駅から自転車トライアルでhowarthまで爆走してきた夫(バスに自転車のせてくれなかったため)の話を聞いて、最終日に駅まで送ってくれた、めちゃめちゃ情にアツイ親切な人だった。
彼は、自ら企業とやりとりをし、コラボする仕事を自分で獲得している。今は、向こうからメールが来るようになったが、初めの頃は自らメールを送っていたそうだ。
これはケニーから教わったらしい。今ではトレーニングとそれらの仕事で日々忙しいようだ。
それでも、まだまだチャンピオン歴を更新し続けるモチベーション満々の彼は仕事がトレーニングに食い込みすぎることのないようにちゃんとバランスをとっている。
本当に自分がやりたいことがはっきりしていて、それは譲らない。
いろいろ彼の考え方、生き方にはインスピレーションを受けたし、鼓舞された。
Jack Carthy |
私自身のトレーニングに対してもモチベーションが上がったし、トレーニングの意識も変わり、ぐんっとレベルが上がったエレメントが2つもあった。
別の競技の人間にもこんなに影響を与えるのだから、本当にすごい人だ。
世界チャンピオンになったことがある人ではなく、世界チャンピオンになり続ける人。これはかなり難しい。
自転車トライアルの奥の奥まで知っている人。これも恐らく多くはないだろう。
最後に、写真を撮ってもらった。肩を組んでくれた彼のエネルギーは意外にもふんわり軽く、優しかった。
お読みいただきありがとうございました。次回は主に我々の旅路をメインにhowarthなどの村の様子も記録していこうと思っています。